2つのコンデンサーを直列接続する場合(電池あり)
図1のように、起電力(電圧) \( V \)〔V〕の電池 \( \mathrm{E} \) 、電気容量 \( C_1 \)〔F〕, \( C_2 \)〔F〕のコンデンサー \( \mathrm{C_1} \) , \( \mathrm{C_2} \)、スイッチ \( \mathrm{S} \) 、抵抗 \( \mathrm{R} \) からなる回路がある。はじめ、スイッチ \( \mathrm{S} \) は開かれており、各コンデンサーの電気量は \( 0 \) C とする。
この状況のとき、何を考えることになると思いますか?(どのような問題が出題されそうですか?)

では、 \( \mathrm{S} \) を閉じると、どうなるでしょうか。
\( \mathrm{S} \) を閉じると、回路に時計回りの電流が流れ(電子が反時計回りに移動し)、コンデンサー \( \mathrm{C_1} \) , \( \mathrm{C_2} \) に電荷が蓄えられると予想できます。また、十分時間がたてば充電が完了し、回路を流れる電流は 0 A となるでしょう。
※ なお、今回のように回路に抵抗が書いてある問題もあれば、書いていない問題もありますが、十分時間がたった後の状態に違いはないので、この違いはまた今度考えましょう。
「コンデンサーの状態が変わったとき」に考えること
コンデンサーの状態が変わったとき、私たちはコンデンサーの \( Q \) , \( C \) , \( V \) をすべて知ること(使える文字が決まっていれば、使える文字を用いてすべて表すこと)が目標となります。
※ \( Q \)〔C〕:蓄えている電気量 , \( C \)〔F〕:電気容量 , \( V \)〔V〕:極板間の電位差(電圧)
つまり、今回のように \( C \) が与えられていれば(ほとんどの場合、与えられていますが)、スイッチを閉じて十分時間がたったとき、コンデンサーの電気量( \( Q \) )と電位差( \( V \) )がどうなったのか、知りたいのです。( \( Q \) や \( V \) を求める問題が出題されるでしょう。)
コンデンサーを含む回路(十分時間がたったとき)における \( Q \) , \( V \) の求め方
注目しているコンデンサーの電気量を \( Q \) 、極板間の電位差を \( V \) とおく。
コンデンサー \( \mathrm{C_1} \) , \( \mathrm{C_2} \) に電荷が蓄えられるので( \( \mathrm{C_1} \) , \( \mathrm{C_2} \) の状態が変わるので)、それぞれ \( Q_1 \)〔C〕, \( V_1 \)〔V〕, \( Q_2 \)〔C〕, \( V_2 \)〔V〕とおきます。また、図2のように、極板の高電位側に \( +Q \) 、低電位側に \( -Q \) と書いておきます。
ただし、おく文字を減らせそうなら、はじめから減らした方がよいので、工夫できないか考えます。

電気量保存の法則より、\( \mathrm{C_1} \) , \( \mathrm{C_2} \) に挟まれた部分(孤立部分)の電気量の総和は一定なので、(図3より)\[ 0 + 0 = -Q_1 + Q_2 \\ よって、Q_1 = Q_2 \] となります。

つまり、充電されていない2つのコンデンサーを直列接続して充電する場合、2つのコンデンサーの電気量は同じになるので、文字を減らして、\( Q \)〔C〕, \( V_1 \)〔V〕, \( V_2 \)〔V〕とおくことにします(図4)。

注目しているコンデンサーの数だけ \( Q=CV \) の式を立てる。
コンデンサー \( \mathrm{C_1} \) , \( \mathrm{C_2} \) に注目して式を立てて、\[ Q=C_1 V_1 … ① \\ Q=C_2 V_2 … ② \] これで、式を2つ立てることができました。
今回、文字を3つ( \( Q \) , \( V_1 \) , \( V_2 \) )おいたので、解くためには方程式が3つ必要です。あと1つ式を立てましょう。
「電圧の関係式」と「電気量保存の式」を、必要に応じて立てる。
まず、「電圧の関係式(※)」について考えます。回路に注目すると、1つの電池で直列接続された2つのコンデンサーを充電しているので、\[ V = V_1 + V_2 … ③ \]が成り立ちます。これで、式を3つ立てることができました。
※ 「電圧の関係式」は、「キルヒホッフの第2法則で立てる式」に相当します。「キルヒホッフの法則」を学習済であれば、この意味を考えてみましょう。
なお、「電気量保存の式」については、すでに電気量の関係を考えて文字をおいたので(電気量保存の法則を用いて、文字を減らしたので)、ここでは必要ありません。
連立方程式を解く。
連立方程式を解いて、\( Q \) , \( V \) を求めます。(解き方の詳細は、補足「連立方程式の解き方(例)」に示しました。)
①,②,③より、\( Q = \frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2} V \)〔C〕,\( V_1 = \frac{C_2}{C_1 + C_2} V \)〔V〕,\( V_2 = \frac{C_1}{C_1 + C_2} V \)〔V〕
これで目標達成です。
補足
\( Q \) , \( V \) の求め方【まとめ】
こちらに「まとめ」を示しました。
連立方程式の解き方(例)
\[ Q=C_1 V_1 … ① \\ Q=C_2 V_2 … ② \\ V = V_1 + V_2 … ③ \]
〔解き方1〕
①,②より、\[ V_1=\frac{Q}{C_1} , V_2=\frac{Q}{C_2} \] ③に代入して、\[ V=\frac{Q}{C_1}+\frac{Q}{C_2}=\frac{C_1 + C_2}{C_1 C_2} Q \\ よって、Q=\frac{C_1 C_2}{C_1 + C_2}V〔\mathrm{C}〕\] ①,②に \( Q \) を代入して、 \[ V_1 =\frac{Q}{C_1}=\frac{C_2}{C_1 + C_2}V〔\mathrm{V}〕 \\ V_2 =\frac{Q}{C_2}=\frac{C_1}{C_1 + C_2}V〔\mathrm{V}〕\]
〔解き方2〕(比などを利用して、工夫して解きます)
①,②より、\[ Q=C_1 V_1=C_2 V_2 \\ よって、V_1:V_2 = \frac{1}{C_1}:\frac{1}{C_2}=C_2:C_1 \] ③より、\( V=V_1+V_2 \) なので、\[ V_1=V \times \frac{C_2}{C_2+C_1}=\frac{C_2}{C_1+C_2}V〔\mathrm{V}〕\] \[ V_2=V \times \frac{C_1}{C_2+C_1}=\frac{C_1}{C_1+C_2}V〔\mathrm{V}〕\] ①(または②)より、\[ Q=C_1 V_1=\frac{C_1 C_2}{C_1+C_2}V〔\mathrm{C}〕\]
更新履歴
2023/3/10 「補足 – 連立方程式の解き方(例)」を追加しました。
2023/3/12 「補足 – \( Q \) , \( V \) の求め方【まとめ】」を追加しました。