静止している物体にはたらく摩擦力(静止摩擦力)

力学

床の上で物体が静止しているとき

はじめに、水平であらい床の上にある物体に、大きさ \( f \)〔N〕の力を右向きに加える場合を考えましょう(図1)。

物体が静止したままであるとき、物体が受ける摩擦力の向きや大きさはどのように表せるでしょうか。(文字が苦手な人は、「2.0Nの力を右向きに加えた」など、具体的な数値で考えましょう。)

※ あらい床:摩擦がはたらく(摩擦を考える)床 / 摩擦がはたらく面には、図1のように斜線が書いてあることが多いですが、書いていない場合もあります。

面に対して、静止している物体にはたらく摩擦力を静止摩擦力といいます。

静止摩擦力は、静止しているという事実(力のつりあい)から向きと大きさを考えるので、水平方向の力のつりあいより、物体は床から、左向きに大きさ \( f \)〔N〕の静止摩擦力を受けていると説明できます(図2)。

力がつりあうためには左向きの静止摩擦力が必要と考えるのです。なお、静止摩擦力の向きについては、「動き出そうとしている向きと逆向き」と考えてもよいです。

しっかり式を立てて求める場合は、次のように考えます。

図3のように、静止摩擦力の大きさを \( F \)〔N〕とおくと、水平方向の力のつりあいより、\[ F=f \] よって、摩擦力の大きさは \( f \)〔N〕、向きは左向き となります。

基本、文字は”大きさ”でおくので、”向き”は左向きと確認しておき、式を立てて大きさを求めるという流れになります。

なお、この式は公式ではなく、静止しているという事実から得られた、今回のような状況でのみ成り立つ式なので注意しましょう。

床の上で静止している物体が動き出すとき

では、続けて物体に加える力を大きくしていく場合を考えましょう。

図3の状況で、物体に加える力(大きさ \( f \) )を大きくするとき、物体が静止したままであれば、静止摩擦力(大きさ \( F \) )も大きくなるといえます。

しかし、静止摩擦力の大きさには限界があり、物体に加える力がある値を超えると物体は動き出します。この物体が動きだす直前の静止摩擦力を最大摩擦力(最大静止摩擦力)といいます。

最大摩擦力には公式があり、最大摩擦力の大きさ \( F_0 \)〔N〕は,静止摩擦係数 \( \mu \) (ミューと読む)と垂直抗力の大きさ \( N \)〔N〕を用いて、\[ F_0 = \mu N \] と表されます。

なお、通常 \( N \) は自分で求めますので、求め方も確認しておきましょう。

ここで、図4のように、水平なあらい面上にある質量 \( m \)〔kg〕の物体に外力を加え、この物体が動きだす直前の状態(加える外力の大きさが、今の値を超えると動き出してしまう限界の状態)である場合を考えます。

このとき、(図5のように力の図示をして、)鉛直方向の力のつりあいより、\[ N = mg \] よって、最大摩擦力の大きさ \( F_0 \)〔N〕は、\[ F_0 = \mu N = \mu mg \] と求められます。

また、このとき外力の大きさは水平方向の力のつりあいより、\( (外力の大きさ)= F_0 \) といえます。

物体が動き出す直前の状態のとき、「静止しているという事実(力のつりあい)」と「摩擦力は最大摩擦力」の両方を考えるのです。

※ 問題の中には、「物体に加える力がある値になったとき、物体が動き出した。」という設定のものがあります。この場合も、動き出す直前を考えます。動き出す直前は、加える力がある値になる直前ですが、(近似的に)ある値を使って「力のつりあいの式」を立てます。

まとめ

  • 静止摩擦力は、静止しているという事実(力のつりあい)から向きと大きさを考える
  • 物体に加える力がある値を超えると動き出すとき、物体が動きだす直前(加える力は、ある値のとき)を考える。
    • 物体にはたらく摩擦力は、最大摩擦力 \( F_0 = \mu N \) となる。
    • 力のつりあいの式を立てる。

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